
「希望年収を教えてください」
「今よりいくら上がれば転職を決めますか?」
──転職活動の最終局面に必ず訪れるのが、年収交渉である。
この場面で言葉に詰まり、チャンスを逃す者もいれば、戦略的に交渉を進め、希望額を勝ち取る者もいる。
では、その違いはどこにあるのか?
本稿では、わたし磯賀場真我が実体験と採用側の視点をもとに、
年収交渉で失敗しないための“たった1つのコツ”を明かそう。
申し遅れました。
本記事の案内人、磯賀場 真我(いそがば まわれ)と申します。
かつて「使えないエンジニア」と揶揄された時期もあった私だが、
転職と海外赴任を経て、5年間で約600万円の年収アップを実現。
「もっと早く知っていれば…」と思う仕事のコツや、評価されるポイント、
遠回りのようで確実な「急がば回れ」の仕事術、年収を上げるために本当に必要な考え方と行動を伝えている。
以下の記事もあわせて読むことで、この記事や本ブログの主旨への理解がより深まるはずだ。
▶️ このブログの全体像(年収アップメソッドの概要)
▶️ 年収推移の実例(5年間で年収600万円アップの軌跡)
それは──「相手に “数字の根拠” を渡すこと」である
年収交渉で失敗する人の多くは、こう答える。
- 「今より上がれば嬉しいです」
- 「◯◯万円くらい希望です(…なんとなく)」
- 「エージェントに任せてます」
──これでは、採用側の心に刺さらぬ。
なぜなら、その金額を支払う理由が何一つ見えてこないからである。
年収交渉で最も大切なのは、
相手にとっての“納得理由”を、こちらから提示することだ。
「年収=価値の証明」である
年収とは、あなたの過去と未来に対する “企業の投資額” である。
ゆえに、「なぜその金額が妥当なのか」を語れなければ、希望額を得ることはできぬ。
以下に、よく使われる“根拠の出し方”を紹介しよう。
■ 根拠の出し方・例
- 「現職では年収◯◯万円。過去3年連続で評価Aを取得しています」
- 「前職では△△万円で、〇〇業務のリーダーを務めました」
- 「貴社の〇〇職の求人相場と照らし合わせると□□万円が適正と考えています」
- 「ジョブ型で成果主義という点は、前職でも同様でした」
──このように、「金額そのもの」よりも「理由」が重要なのである。
失敗する人のNGパターン
いくらスキルが高くとも、以下のような交渉姿勢では損をする。
- 希望額に根拠がない
- 相場との比較がない
- 声が小さい、言い切らないなど、自信がない印象を与える
- 「上げてほしい」ばかりで企業目線を欠いている
- エージェント任せで本人が説明できない
交渉とは、自分の価値を “他人の言葉で伝える” 技術である。
面接時に使える!希望年収の伝え方テンプレート
以下のように話すことで、印象は劇的に変わる。
「希望年収としては◯◯万円を想定しております。
現職では〇〇のプロジェクトを推進し、××万円規模のコスト削減に貢献しました。
また、貴社の募集要項にある〇〇業務には、前職でも3年以上従事しており、
早期にキャッチアップできると考えております。
その上で、御社の報酬体系や等級に合わせて最終的にはご相談させていただければと考えております。」
このように、数字+根拠+柔軟性をセットで提示することで、
交渉の場が “対立” ではなく “共創” の空気へと変わる。
【実体験】交渉しなかった“私”が学んだ、大きな差

私自身、かつて転職時の年収交渉で失敗した経験がある。
あるとき、転職先に既に在籍していたある社員の年収情報を偶然知った。
彼は私と年齢も職歴も非常に近く、専門分野も同じであった。
「自分も同等の額を提示されるだろう」──そう思っていた。
だが、提示された条件は想定よりもかなり低かった。
■ なぜ年収に差がついたのか?
私は以下のように分析している。
- 前職の年収に差があった
- 当時はコロナ禍で企業の採用予算が絞られていた
- 年齢・経験年数の差
- そして、交渉力の差
入社後に彼と話したことでわかったのは、彼は交渉上手であったということだ。
【教訓】“スタートライン”は、すべてを左右する

年収交渉とは、入社時点のスタートラインを定めるものである。
👉 関連リンク:転職で年収アップを成功させる戦略と注意点
このスタートラインは、以下のようにその後すべての収入制度に影響を及ぼす。
- 昇給の起点(ベースアップ額)
- 賞与の計算基準
- 海外赴任時の現地手当・加算率
- 次回の転職活動で提示される金額
これらの多くは、ベース年収×◯% という形で算出される。
■ “積分的に効く差” は、あとで取り返しにくい

私も現在は海外赴任中であるが、ふと考えることがある。
あのとき、真剣に交渉していれば、
海外手当も、さらに増えていたはずだ──
👉 関連リンク:【実体験】海外赴任で年収はどこまで上がる?
たった数十万円の差であっても、
それは 毎月・毎年の手当や賞与に乗ってくる“積分的な差”として累積されていくのだ。
これは「たられば」ではある。
だが、私にとっては明確な教訓であり、高い授業料だったと言える。
【企業側の事情】予算には“上限”がある
もうひとつ押さえておきたいのが、企業側の事情である。
企業には、採用時にあらかじめ年収の上限・レンジが設定されている。
これは職位、等級、人事制度、部署の予算に応じて事前に定められており、
大幅に超えると「評価は高いが見送り」となるリスクもある。
■ 採用時の予算はどう組まれるか?
- 等級別の報酬テーブル
- 人事・経営会議による採用承認
- 現職社員との整合性(バランス)
- 部門ごとの年間人件費枠
ゆえに、企業が柔軟に金額を出せるわけではないことも理解しておくべきである。
【戦略】現在の年収はどう扱うべきか?
面接やエージェント経由で「現在の年収はいくらか」と聞かれる場面もある。
このときの対応として、以下を推奨する。
- 「おおよその額」を答える(正確すぎない)
- 「成果や役割とセット」で語る
- 「希望年収は別軸」で提示する
■ 例文:バランスの取れた伝え方
「現職では年収◯◯万円程度ですが、
貴社ではより高い職責を想定しておりますので、□□万円を希望しております。
その上で、最終的には御社の制度に合わせてご相談できればと考えております。」
このように、「過去(実績)+未来(貢献)+柔軟性」のセットが、
交渉の場を建設的なものへと導く。
結論:交渉とは「信頼」と「納得」を生み出す技術である

年収交渉で必要なのは、テクニックではない。
自分の価値を、相手に伝わる形で語る力である。
成果、実績、相場──それを論理と信頼のもとに整理し、
誠実に、かつ冷静に伝えること。
それができたとき、あなたは報酬を「もらう人」ではなく、「選ぶ人」になるのだ。
※もちろん、まずは現職での年収アップを同時に狙うべきである。
それは、市場価値を上げる訓練となるからだ。
👉 関連リンク:【会社を変えずに市場価値と年収を高める5つの習慣】
📢磯賀場 真我からひと言
交渉とは、己の価値を相手に届ける“技術”である。
わたしもかつて、その技術を持たぬがゆえに、大きな代償を払った。
若き読者よ、どうか忘れるな。
「スタートライン」は偶然ではなく、自らの言葉で築くものである。
そしてその一歩目が、これからの君の “報酬人生” を形づくるのだ。
健闘を祈る