
栄転、挑戦、新天地──
海外赴任の内示を受けたとき、喜びと同時に不安も押し寄せてくるのが人の常である。
「何を準備しておけばよいのか?」
「会社任せで本当に大丈夫なのか?」
実際、会社がやってくれるのはビザ取得や引っ越し手配、現地での住宅契約など“手続き関連”が主である。
だが、自分の人生や生活に関わる“個人の準備”は、自分でしかできないのだ。
ここでは、私の実体験をもとに、「海外赴任が決まったら必ずやっておくべきこと」を厳選して紹介しよう。
申し遅れました。
本記事の案内人、磯賀場 真我(いそがば まわれ)と申します。
かつて「使えないエンジニア」と揶揄された時期もあった私だが、
転職と海外赴任を経て、5年間で約600万円の年収アップを実現。
「もっと早く知っていれば…」と思う仕事のコツや、評価されるポイント、
遠回りのようで確実な「急がば回れ」の仕事術、年収を上げるために本当に必要な考え方と行動を伝えている。
以下の記事もあわせて読むことで、この記事や本ブログの主旨への理解がより深まるはずだ。
▶️ このブログの全体像(年収アップメソッドの概要)
▶️ 年収推移の実例(5年間で年収600万円アップの軌跡)
① 持ち物の精査と準備

まずは持っていくべきものの整理である。
特に現地で手に入らないもの、代替が難しいものは慎重に見極めねばならぬ。
- 医薬品(常備薬、湿布、日本特有の風邪薬など)
- 日本語の本や書類(電子化もおすすめ)
- お気に入りの文房具や日用品(意外と現地では不便を感じる)
- 変換プラグや変圧器(対応していない家電に注意)
- ビジネス用スーツや靴(現地での購入が難しいサイズの人は特に)
渡航後、「あれを持って来ればよかった…」と思うものほど、出発直前には気づきにくいものだ。
とはいえ、赴任先が日本に近い地域であったり、年に何度か一時帰国できる場合であれば、あまり神経質になる必要もない。
実際に現地での生活を始めてから必要性を感じた物を、一時帰国の際に持ち帰るという対応も十分に可能である。
重要なのは、「絶対に必要なもの」と「あとからでも何とかなるもの」を、冷静に見極めることである。
② 保険内容の見直しと“不要な保険”の整理
多くの企業では、海外赴任者に対して会社負担で現地医療保険を手配してくれる。
そのため、個人で新たに保険に加入する必要はない場合が多い。
だが、見落とされがちなのが、「今すでに入っている保険が必要かどうか」という視点である。
- 日本国内で加入している医療保険・がん保険・生命保険などが、海外でも適用されるかの確認
- 海外では保障対象外となる場合、保険料を払い続ける意味があるかを再考
- クレジットカード付帯の海外保険が、赴任中にも有効か確認
- 帰国後の再加入が難しい保険(年齢制限など)については、継続判断を慎重に
保険とは、“安心を買う”ものである。
だが、内容を把握しないまま“惰性で払い続ける保険”は、見直しの好機を逃しているとも言える。
私自身の例を挙げよう。
海外赴任をきっかけに、それまで何十年も継続してきた大手保険会社の医療保険を解約し、県民共済へと切り替えたのである。
その結果、月々の保険料は数千円まで圧縮され、無駄な固定費を削減できた。
実質的な手取りが増えたことで、年収アップと同等の効果を実感している。
③ 携帯キャリアの解約 or 最低プラン化
日本の携帯キャリアは放っておくと高額なまま維持費が発生する。
だが、完全解約すると「一時帰国時に不便」になるため、最低料金プランへの変更が現実的な選択肢だ。
- ahamoやpovoなど、柔軟な低料金プランへの乗り換え
- eSIMへの切替(必要な場合)
- SIMカードの保管と帰国後再開の方法を確認しておく
一時帰国時やSMS認証が必要な場面も想定し、“完全解約は慎重に”が鉄則である。
また、帰国後の生活を見据えるなら、現在の電話番号は維持しておきたいという人も多いはずだ。
実は、キャリアによっては月数百円程度で番号を保管できる「番号保管サービス」を提供している場合がある。
解約ではなく「一時休止」「番号保管」などの選択肢も視野に入れ、自分に合った形で維持する方法を確認しておくとよい。
④ 転出届とマイナンバー関連手続き
日本の住民票を抜く、つまり転出届の提出も忘れてはならぬ。
出国の14日前から手続き可能で、これにより住民税の支払い義務は原則としてなくなる。
ただし、海外赴任の場合は、年金や健康保険の扱いが“自営業者の海外移住”とは異なる点に注意が必要だ。
多くの企業では、海外赴任者であっても日本の会社から給与が支払われ続ける。この場合、
- 日本の厚生年金・健康保険の加入が継続される
- 年金に関して「任意加入」などの手続きは原則不要
- 扶養家族が同行しない場合、その家族の保険・年金の扱いには要確認
海外移住と海外赴任では、制度の適用範囲が異なる。
自身の勤務形態が「日本給与ベース」か「現地給与ベース」かを、会社に確認しておくと安心である。
また、マイナンバーカードは転出後も保持できるが、住所変更などの手続きはできなくなるため注意が必要だ。
不安であれば、会社の人事担当者に聞いてみると良いだろう。
⑤ 証券口座・NISA関連の確認

意外に多いのが「海外転居後にNISA口座が使えなくなる」という事実に気づかぬ者である。
- 国内証券会社へ海外転居の連絡義務あり
- 一般的にNISAは海外居住中は利用不可となる(特定口座も影響あり)
- 証券口座凍結リスクを避けるため、転居前に取引停止設定や解約判断も検討
- つみたてNISAをやっている者は、最後の積立月や停止処理も確認すること
また、海外赴任中はNISA口座を利用できなくなるため、せっかく年収が上がっても、余剰資金を効率よく資産運用に回せないという機会損失が発生する。
特に「赴任満了後にNISAを再開すればよい」と考えている者は要注意だ。時間を失うことこそ、最も大きな損失である。
単身赴任で配偶者が日本に残る場合は、配偶者名義のNISA口座をフル活用する戦略が極めて有効だ。
あらかじめ家族と連携し、資金移動や積立設定をしておけば、赴任期間中も “間接的に”資産形成を続けることができる。
⑥ 車の処分・売却
自家用車を保有している場合、その処分には意外と時間がかかる。
保有を継続する場合には、車検・保険・税金・駐車場代などの維持コストが、無駄に発生し続けるリスクがある。
ただし、保管場所さえ確保できれば「一時抹消登録」によって、車検・自動車税・自賠責保険の負担を抑えることも可能である。
これは、「今は使わないが、いずれ再登録して使いたい」場合には有効な選択肢である。
- 中古車買取店への事前査定
- 名義変更または廃車手続き
- 車庫証明の解除手続き
「帰国後すぐにまた使いたい」という者は、親族への名義貸与や長期保管も視野に入れるべきだが、管理負担とトラブルのリスクは想像以上に大きい。
また、長期間動かさないことで車両自体に不具合が出る可能性も高く、価値の目減りも避けられぬ。
思い入れのある車両でなければ、潔く手放すことが、結果として賢明な判断となるであろう。
⑦ その他:サブスクや公共サービスの整理
細かいが地味に重要なのが 「月額課金サービス」や公共サービスの解約 である。
- サブスク系(Netflix, Spotify, 日本限定の配信サービス等)
- 電気・ガス・水道・NHKなどの停止手続き
- 定期購入の通販などの解約 or 一時停止
- 郵便物の転送設定(日本郵便で最大1年間)
まとめ:海外赴任の準備は“生活の棚卸し”である

海外赴任は、人生の大きな転機である。
だが、その舞台に立つ前には、自分自身の“生活”を見つめ直す作業が必要不可欠だ。
「会社がやってくれること」ではなく、
「自分でしかできないこと」を一つずつ片付けていこう。
これらの準備を丁寧に進めておけば、赴任先でのスタートダッシュに余裕が生まれる。
“渡航後の自分”が、きっと感謝することになるだろう。
📢 磯賀場 真我からひと言
赴任準備とは、“過去を整理する”ことであり、
未来に向けて“軽やかに飛び立つ”ための身支度である。
残すべきもの、手放すべきもの──
それを見極める力が、海外での成功をも左右するのだ。
健闘を祈る