
今回は、私が尊敬する友人からもらった実体験をもとに、
「英語がまったく話せなかった若手が、どうやって海外対応までできるようになったか」を紹介しよう。
成長の鍵となった“環境”と“マインド”には、年収アップを目指すビジネスパーソンにとっても、学びが多い。
英語が “全くできなかった” 若手エンジニアの登場

2000年代初頭、日本のメーカーで、米国向けオーディオ製品の開発が進められていた。
筆者の友人は、そのプロジェクトに関わっていたプロジェクト管理者である。
その開発チームに、新たに派遣の若手エンジニアが加わった。
英語力は、まったくのゼロ。
当然、海外とのやり取りなど夢のまた夢──のはずだった。
しかし、数年後、彼は米国とのメール対応や、マレーシアの工場との会話を難なくこなす存在にまで成長したのである。
その背景にあったのは、本人の努力だけではない。
“周囲の空気” と “恐れない姿勢” が鍵を握っていた。
英語が苦手な彼が成長できた「3つの環境要因」
① 英語が苦手な先輩の存在
彼には、英語が得意でない“兄貴分”の先輩がいた。
この先輩がこう言ってくれたことが、大きな支えとなった。
「英語?俺もよくわかってないし、困ったら周りに助けてもらえばいいんだよ」
この一言で、「失敗してもいいんだ」という安心感が生まれた。
② 完璧でない英語でも発信する上司
設計マネージャーもまた、ネイティブのように話せるわけではなかった。
いわゆる“アジア英語”であったが、自信を持って海外の工場に指示を出していた。
「あれで通じるんだ。なら、自分にもできるかもしれない」
彼にとって、その姿は “完璧を求めなくていい” という実践的な手本となった。
③ 英語堪能な上位者が必要な場面はカバー
チーム内には、英語が堪能なリーダーもいた。
重要な対外的コミュニケーションは彼が担っていたが、あるとき判断した。
「この内容なら、もう彼に任せても大丈夫だろう」
そこから、彼はアメリカとのメール連絡なども任されるようになっていった。
英語力は「段階的」に伸びる
彼の成長は、3つの段階を経ていた。
- 半年後:「失敗しても大丈夫」という安心感が芽生える
- 1年半後:「通じる喜び」を体感する
- 3年目:「自分も英語ができるかもしれない」という自信が宿る
そして4年目には、海外とのやりとりを日常業務として自然にこなせる存在になっていたのである。
英語力に必要なのは、「かっこつけない勇気」

彼の真の強みは、かっこつけなかったこと だ。
- 「ごめん、英語わかんない。別の言い方してくれない?」と相手に英語で正直に言う勇気
- 「これ、自分の書いた英語、変じゃないですかね?」と他人に確認を求める謙虚さ
そして、それを笑わずに受け止めてくれる仲間や上司の存在。
この空気が、彼の挑戦を後押ししていた。
もしも、チームに“英語マウント”を取るような人物がいたなら、彼の成長は止まっていたかもしれない。
「環境に恵まれていた」だけではない
読者の中には、こう思う方もいるだろう。
「そんな理想的な環境だったら、誰だって伸びるよ」
だが、それは一部の真実でしかない。
同じ職場にいながら、英語力が伸びなかった人もいたのだ。
では、何が違ったのか?
それは、「環境を自ら活かす姿勢」である。
「教えてください」と臆せず言える勇気こそが、成長への扉を開くのだ。
そして彼は、その後も “評価される人” であり続けた
開発していたカーオーディオ事業は、やがて衰退を迎える。
それに伴い、彼の派遣契約も終了となった。
だが、そこで終わりではなかった。
彼は、身につけた英語力と実務経験を武器に、引く手数多の存在となったのだ。
地元で希望の職を見つけ、結婚し、新居を購入したとのことだ。
“英語ができなかった若手”が、仕事にも人生にも自信を持てる男に変わっていた。
実は、私自身にも似たような経験がある
この話を聞いていて、思わず自分自身の過去を思い出した。
私にも、まさに同じような “英語力の覚醒” 体験があったのである。
それは、初めて海外プロジェクトに参加したときのことだった。
今振り返ると、あのときもいくつかの「追い風」が重なっていた。
- 海外旅行経験が少しあった
→ 多少なりとも、異国で英語を使うことに慣れていた。文法は怪しくとも、度胸はついていた。 - チーム内に英語が堪能な人がほとんどいなかった
→ その分、自分が自然と英語対応の“主担当”になった。
何よりもよかったのは、英語マウントを取る人がいなかったことだ。
安心して、拙い英語でも試せた。 - 取引先のエンジニアも、似たような英語レベルだった
→ 似たようなレベルであったからこそ、話が通じやすかった。
お互いに“通じればOK”という前提があった。
その空気が、変に身構えることなく英語で会話する自信へとつながった。
もし相手がネイティブだったら・・・ 英語が流暢だったら・・・ と考えると、今でもゾッとする。
こうした条件が重なったことで、それまで眠っていた私の「英語脳」が一気に目を覚ました。
完璧を目指す必要はない。
ただ、通じさせる意思と相手と向き合う姿勢があればいいのだと、体感した瞬間であった。
まとめ:英語力とは、スキル+環境適応力である

- 英語は「完璧に話す」より、「伝えようとする勇気」が大事である。
- 失敗を恐れず、かっこつけず、素直に聞ける人が伸びる。
- 恵まれた環境に見える人は、それを「引き寄せ」「活かす力」を持っている。
- 英語力の成長は、才能ではなく “姿勢” と “空気” で決まる。
- 成長した先には、キャリアの選択肢の広がりと、人生の充実が待っている。
📢磯賀場 真我からひと言
英語ができるかどうかは、“環境” と “勇気” 次第である。
自信とは、成功体験の積み重ねであり、最初の一歩がなければ始まらぬ。
誰かが助けてくれる場所で、かっこつけずに飛び込んでみろ。
英語力を超えて、人生そのものが変わることもあるのだ。
健闘を祈る